移住

醤油ラーメンを食べに行って、カタルシスを得る。

国東に来ていちばん困っているのは、ラーメン屋が少ないことだ。
しかも、九州で「ラーメン」といえば「とんこつラーメン」とほぼ同義。
以前、大分出身の方と話をしていて「醤油ラーメンをわざわざ食べる意味がわからない。うどんでよくない?」と言われたのは忘れられない。ラーメンといえばこってりとした食べ物であり、味噌ラーメンはあるが(北海道系味噌ラーメンのローカルチェーン「味噌乃家」さんはどんどん店舗を増やしている模様)醤油ラーメンはほぼない。それが九州におけるラーメン事情なのだと私は理解している。

新潟県といえば米だけれど、実は、人口1人当たりラーメン店舗数が全国1位というラーメン県である。(唐澤頼充監修「新潟のおきて〜ニイガタを楽しむための50のおきて」より)
その話をすると「新潟のラーメンってどんな感じ?」と聞かれるのだが、札幌ラーメンとか東京ラーメンのような明快なイメージはない。しかし、前掲の「新潟のおきて」によると、新潟五大ラーメンは、透き通る魚介スープの中華そば、しょうがの効いた長岡系醤油ラーメン、寒くてもなかなか冷めない背脂系ラーメン、極太麺を絡める濃厚味噌ラーメン、そして三条カレーラーメンだそうで(※諸説あり)、とんこつ以外は結構いろいろなラーメンが揃っている。
(新潟では、とんこつラーメンは一風堂しか行ったことがないです。)

今はずいぶんと慣れたけれども、2年前は完全にラーメンに飢えていて、広島の尾道に行く用事があったときに「尾道ラーメンといえば醤油!ラーメンを食べずして国東へは帰れぬ!!!」と心に誓い、同行のみなさまを巻き込んでラーメンをいそいそと食べに行ったのだけれど、夢にまで見るほど恋い焦がれた醤油ラーメンを一口食べたら、なんと麺がちぢれておらずストレート麺で「なんか違う!?!?!?」と困惑してしまったことがあった。
尾道ラーメンが美味しくないわけでは決してない。(というか美味しかったです!ごちそうさまでした!)
言ってみれば、プレーンの丸パンだと思ってかじりついたら中に餡が入っていたような衝撃だったのだ。たとえ餡パンが大好きでも、そしてその餡パンが恐ろしく美味しい餡パンだったとしても、「思ってたのと違った!!!」という衝撃はそれがプレーンだと思い込んでいればいるほどに大きい。

そんなこんなで、最近ではドラッグコスモス国東店でたまーーに買う「日清のラーメン屋さん(旭川しょうゆ味)」を心の糧に生きていたのだけれど、大分市内にラーメン屋ができたと「シティ情報おおいた」で見かけた。その名も「嫁の中華そば」
大分市か、遠いなあ。でもいつか行ってみたいなあ。
そう思いつつもすっかり忘れていたある日、国東日和。の岡野さん(参考記事:「ぶっちゃけ地域活性化とかどうでもいい」が信条のプロジェクト「国東日和。」がはじまりました。)と所用で大分市に行ったときに、不意に思い出した。
「『嫁の中華そば』っていうお店があるらしいんですよ」
食事時ではなかったし、思い出して口にしただけだったのだが、岡野さんは用事を終えた後に「行ってみようか」と寄ってくれた。

「嫁の中華そば」は、県庁の裏手にある。(すぐ向かいが駐車場で便利。40分200円)
閉店間際に滑り込むと、壁がピンク色でカウンターの向こうには女性のみ。入りやすい雰囲気の店舗だ。
券売機で「嫁の推しメン」(普通よりもチャーシューが多め)を頼むと、すぐに透き通ったスープにシンプルなトッピングの中華そばが出てきた。一口食べて「ああ、これだ…!」と感極まってしまい、自分が新潟から来て醤油ラーメンをずっと恋しく思っていたと店員さんについ語ってしまった。すると「わかりますー!こっちの醤油ラーメンは違うんですよ!」と応えてくれるものだから、「麺がちぢれてなくて!」と訴えると、オーナーさんが「そうなんです!!!」とうなずいた。「だから、麺は喜多方(福島県。蔵と喜多方ラーメンの都)から取り寄せてるんです!」と。
その瞬間、3年分の鬱屈とした思いが浄化されたように感じた。
そして思った。私は、この「なんか違う」感に同じ熱量で共感してほしかったのだ。

大分の友人に伝わらないのはもちろんなのだけれど、新潟の友人にも「麺が絶妙に違う」という感覚が伝わらず、「わかるようなわからないような」という反応が多かった。そこに、この熱意とこだわりである。これはファンにならざるを得ない。

あっという間にラーメンを平らげてしまい、「また来ます!」とお礼を伝えて帰った。美味しいラーメンを食べた以上の、もっと深い満足感があった。

岡野さんも「おいしい」と言っていたし、食べログの口コミによるとお昼時には行列ができるらしい。
大分で醤油ラーメンブームが起きるかもしれない。(起きてくれたらいいなあ。)